お家のメンテナンスにかかる費用は?―賢いメンテナンスの考え方をご案内します2022/08/30
1.はじめに―気持ちよく住み続けるには「メンテナンス」が大事
住まいに関して、避けて通れないのが、お家のメンテナンスの問題です。
集合住宅であれば、修繕積立金を毎月支払い、共用部のメンテナンスは管理会社などに一任することが多いですが、戸建住宅を購入した場合は、一般的に、自分たちで資金を積み立て、自身でメンテナンスのタイミングを見極め、実施していく必要があります。
そうは言っても、どのタイミングでメンテナンスを行うのが望ましいのか?メンテナンスにはどのくらいの費用がかかるのか?イメージするのは、なかなか難しいと思います。
今回は私共が専門とする、外壁塗装・屋根塗装・防水工事などを中心に、メンテナンスの時期や費用をご案内致します。メンテナンスにかかる支出は手痛いですが、予め時期や費用を認識しておくことで、少しでも備えができれば、これに越したことはありません。
2.築10年以上になると増大するメンテナンス費用
メンテナンスにかかる支出は、築10年を過ぎると、大幅に跳ね上がると言われます。
その理由は、大きく分けると以下の2つです。
①住宅設備・家電製品などの耐用年数が10年程度であるため
一般的に住宅設備や家電製品の寿命は、約10年程度であると言われます。
エアコンや給湯器などの一部製品・設備には「設計上の標準使用期間」が設定されており、これらは概ね10年間と定められています。また、それ以外の製品においても、メーカーでの部品の在庫期間は6~10年程度であり、メーカーも10年程度の寿命を想定して設計されています。10年を過ぎると、製品の修理ができず、交換が必要になるというケースがほとんどです。
勿論、これらの年数を過ぎたら必ず壊れるというわけではありませんが、新築時に住宅設備や家電製品を新調した場合、築10年に達した頃に多くの製品が寿命を迎え、交換の費用がかかるようになってくるのです。
ちなみに、内閣府の「消費動向調査(2021年3月実施版)」によると、2人以上の世帯における家電製品の平均使用年数は、ルームエアコンが13.2年、電気冷蔵庫が12.9年、電気洗濯機が10.2年……などとなっており、買い替え理由に関して、これらのいずれの製品も過半数が「故障」を挙げています。
②外壁塗装などの大掛かりなメンテナンスが必要になるため
住宅設備や家電製品だけではなく、外壁や屋根、バルコニーや屋上の防水など、建物の外装においても、築10年を過ぎると、メンテナンスの時期を迎えはじめます。建物の外装材が、紫外線や風雨に晒されることで徐々に劣化していき、ひび割れや色あせが生じたり、防水などの機能が低下したりといった症状が出始めるのです。中でも紫外線に弱い、外壁材の接合部や窓廻りなどのシール材や、常に紫外線を受ける屋根などが、劣化が早い箇所になります。
近年は技術改良が進み、安いグレードの住宅であっても、10年で著しく劣化することは少なく、12~15年程度は耐久性を維持できるようになりました。しかしながら、劣化したままの状態を放置すると、外壁材や下地・躯体にダメージが行ったり、雨漏りが発生したりするおそれがあり、メンテナンスコストが高くついてしまうことがありますので、適切なタイミングでの施工が求められます。
外壁塗装などの外部の工事は、足場を組む必要な場合が多く、また作業に日数を要するため、どうしても費用がかかります。
建物の外壁に関して、メンテナンスが必要なタイミングの見分け方や、塗装のタイミングについては、以前の記事もご参照ください。
上記のような理由から、メンテナンス費用が掛からない、築年数の浅いうちから、メンテナンスにかかる費用を積み立てておくと有効です。
3.メンテナンスに必要な費用はどのくらい?
それでは、お家のメンテナンスのために、どのくらいの費用を用意しておけば良いのでしょうか。
建物の大きさや間取り、立地条件によって多少異なってきますが、都内における2階建て戸建住宅の標準的な事例をご案内します。
①外壁塗装・屋根塗装・防水工事
<費用:110~250万円 頻度:10~20年ごと>
間取りの変更を含む大規模なリフォームは別として、これらの外装工事は、おそらくメンテナンスの中で最も金額を要する工事だと思います。金額が大きいので、内訳をつけてご案内致します。
(1)足場工事:20~30万円
外壁や屋根の塗装に際しては、建物の周囲に足場を組む必要があります。
建物が大きかったり、隣地とのスペースが狭かったり、屋根の勾配が急だったりすると、多少費用が増大します。
また作業に際し、公道上への足場組立や、公道の封鎖を行う場合は、道路占用・一時使用許可を関係官庁から受ける必要があり、別途費用がかかることがあります。
(2)下地工事:20~50万円
塗装に先立って、外壁のつなぎ目や窓廻りに、シール材を充填します。また外壁や屋根を点検し、ひび割れなどの傷みがある部分を補修します。
「ALC」と呼ばれる、目地の多い外壁材が使用されている場合は、シール材の充填箇所が非常に多くなるため、費用が増大します(足場工事と比べて記載費用に幅があるのはこのためです)。
(3)塗装工事:55~100万円(屋根がある場合は+10~25万円)
外壁や屋根を塗装することで、建物の美観を向上させるとともに、これらの基材を紫外線や風雨から保護します。雨樋などの「付帯部」と呼ばれる箇所も、あわせて塗装します。
こちらも記載費用に幅がありますが、これは建物の大きさもさることながら、使用する塗料の価格が大きな費用の変動要因になります。中でも仕上げに使う塗料は価格の幅が広く、汎用品であるシリコン塗料と、高耐久のフッ素塗料とでは、材料費に倍以上の差が出ます。
使用する塗料で、塗装の耐久年数は変わってきます。次なる塗り替えを10年後にするか15年後にするか、あるいは20年後にするか、ご家族の人生設計に合わせて、塗料を決めていただくのが宜しいかと存じます。
(4)防水工事:5~70万円
こちらの項目も費用の幅がありますが、建物の形状による差が大きいです。
バルコニーに既存防水層を保護する「トップコート」を塗布するだけであれば、上記の塗装工事の期間内での作業ができますが、「陸屋根」と呼ばれる平たい屋根(屋上として活用されることも多いです)の建物の場合は、大掛かりな防水工事が必要なこともあります。
②防蟻工事
<費用:20~30万円 頻度:5年ごと>
シロアリ防除の薬剤の効果は、5年程度で失われてしまいますので、5年に1度防蟻工事を行うことが望ましいと言われています。シロアリが発生して、木材の腐食が進むと、外壁の撤去を伴う補修が必要になってしまうことがあります。特に雨漏りが一度発生してしまうと、シロアリの好む環境ができてしまいますので、要注意です。
③水回り修繕
水回りはトイレ・キッチン・バスルームなど幅が広く、メンテナンス内容もパッキンの交換からユニット全体の交換に至るまで様々です。メンテナンスの頻度も各家庭での使用状況やニーズによって異なりますので、詳細は別の機会にてご案内したいと思いますが、定期的なメンテナンスが必要なものとして、給湯器交換をご案内させていただきます。
給湯器交換
<費用:10~40万円 頻度:10~15年ごと>
給湯器は突然に壊れるケースが多く、工事までに時間がかかり、お風呂に入れないなどの生活への不便をきたしたり(特に冬場に使用不能になると大変です)、緊急対応として高額な工事費を請求されたりする事例があります。年数が経過したタイミングで、早めの交換をご検討いただいた方が賢明です。
私共のお勧めは、外壁塗装を行うタイミングで給湯器も交換することです。外壁塗装と給湯器交換は、メンテナンスを行うべき時期が近く、外壁塗装と同時におこなうことで、給湯器の背面の壁も塗装できます。タイミングがずれると、給湯器背面の塗装できなかった箇所が跡として残ってしまいます。
④内装材(クロス・畳)補修
<費用:30~60万円 頻度:5~10年ごと>
生活環境によっては、内装材も定期的に交換が必要です。クロスや畳のグレードにより、費用は前後します。また、畳は畳床の劣化が無ければ、「裏返し」「表替え」などの方法が取れます。
これらのメンテナンス費用を合算すると、築35年前後で延べ500~600万円の費用をかけている方が多いようです。年間で換算すると15万円/年程度の支出となりますが、ここ数年で原材料や人件費の高騰に伴う工事費の増加傾向が見られますので、より多く貯蓄しておけると一層望ましいと思われます。
4.まとめ―「安かろう悪かろう」の工事をしないために
上記以外にも、住宅設備・家電製品の交換に伴う費用の支出も想定されます。
教育費や娯楽費など、お家のメンテナンス以外の支出もある中で、生活のゆとりがある方は決して多数派ではないと思いますが、お家のメンテナンスの時期や費用を想定して、少しずつでも資金を準備しておくと、心にゆとりを持って工事に臨めるのではないかと思います。
また計画的にお家のメンテナンスを計画し、情報収集をすることで、「安かろう悪かろう」の業者を回避することができます。
特に外壁・屋根の塗装は、安く手抜きをしようとすれば、いくらでもできてしまう工事です。仕上がりは素人目では違いは分かりませんが、2,3年経ってくると、如実に違いが表れます。
彼らは「モニターになってもらえれば、広告宣伝費分をお値引きします」「決算月なので、今月中にご契約いただければお安くします」などと言って、大幅な割引を提案してきます。金額に目がくらんで、このような業者に工事を依頼してしまう方も少なからずいらっしゃいますが、予めメンテナンス費用の心積もりをいただき、悪質な業者に騙されないよう、十分ご注意ください。不安なことやご不明な点等がございましたら、私共へもお気軽にご相談いただければと思います。