外壁塗装で言われる「耐用年数」って何?2021/11/30
1.はじめに
「各社様々な塗料で提案されるけれど、結局どの塗料で塗るのがいいの?」
―外壁塗装に関して、お客様から多く寄せられる質問の一つです。
多様なニーズに応える形で、各塗料メーカーは様々な塗料を世に出しています。
コストパフォーマンスに優れるもの、耐久性に優れるもの、ひび割れしにくいもの、遮熱・断熱効果のあるもの、意匠性に秀でるもの、さらには良い香りを発するものまで…そしてどのメーカーも似たような商品を出しているものですから、お客様も混乱して当然です。
数ある塗料の中から、次回の塗り替え時期やご予算といったお客様のご要望を伺いながら、お客様のそれぞれのお家・建物に合った塗料を選択することが、私共の腕の見せ所でもあります。
どのような塗料があるのか?どの塗料がおすすめなのか?
今回はそんな疑問に、塗料の特性や耐用年数からアプローチして、お答えしていきたいと思います。
2.「塗料の耐用年数」とは?
塗料の性能を比較するのに、最も用いられる指標は「耐用年数」だと思います。
自然光または人工光を対象物に照射し、塗膜の劣化具合を調べる「暴露試験」等で得られたデータや、実地調査の結果をもとに、メーカーが標準的な耐用年数を公表している塗料が多いですが、塗装業者が経験や伝聞に基づいて「この塗料は○○年持ちます!」とうたっていることもありますので、両者は峻別して考える必要があります(業者によっては「30年耐久」などと営業する所もあるようですが、30年耐久を公称する塗料を扱っているメーカーは存在しません)。
暴露試験の方法及び試験結果によるグレードの区分の仕方は、JIS規格(日本工業規格)によって定められています。キセノンランプの照射による促進対候性試験では、照射2,500時間を経過し、「光沢保持率80%以上」「変色程度がグレースケール3号以上」「白悪化の等級が1以下」のいずれも満たすものを、「対候形1種」として規定しています(現在住宅用に用いられる塗料の多くは、この基準を満たしています)。光沢・変色・白亜化(チョーキング)といった、これらの条件を満たさなくなったら、塗料の「耐用年数を迎えた」と言っても良いでしょう。塗料によっては、照射時間をさらに伸ばした結果を公表することで、耐久性をアピールしているものもあります。
注意が必要なのは、これらの試験結果上での耐用年数と、実際に建物を塗装した際の耐用年数は、必ずしも一致しないという点です。実際の塗装の耐用年数は、雨や風、地震といった紫外線以外の外的要因によっても左右されるほか、外壁の材質等、下地の状態によっても異なってきます。
私共が所属している「日本塗装名人社」では、沖縄県の宮古島の暴露試験場の一角を借り、各メーカーの塗料の耐久性を、自ら確認しています。宮古島は東京よりも2倍近くの紫外線が降り注ぎ、さらに高温多湿で潮風も強く、対候性試験に適した過酷な環境にあります。
この場所に各メーカーの塗料板を置いてみると、高耐久を自称する塗料であっても、1,2年程度で色あせが始まるものもあります。メーカーによって、公称の耐用年数と実際の耐久具合の差にばらつきがあることが分かります。自動車の燃費みたいなものなのでしょうか……。
3.塗料の種類と耐久性の違い
塗料の耐用年数は、主にその素材によって変わってきます。
上述の通り、高耐久をうたっていても、実際にはそこまでの耐久性があるかどうか怪しい塗料もあるのですが、ご参考程度にいただければと思います。
耐用年数に幅があるのは、立地条件などで差が出るからというのは勿論なのですが、同じ素材の塗料でも、メーカーによってその中身が異なるというのが大きいです。
例えば、同じ「シリコン塗料」であっても、シリコンの含有率は、数%のものから数十%のものまで様々です。アクリルベースの塗料に少量シリコンを混ぜただけでも「シリコン塗料」と言えてしまうのです。
このような詐欺まがいの塗料は、ハイグレードのイメージが強い「無機塗料」でよく見られます。無機物というのは、いわば石やガラスのようなもので、単体では塗料たり得ません。シリコンやフッ素ベースの樹脂に無機成分を加えることで「無機塗料」となるのですが、安い塗料を中心に、肝心の無機成分がごく僅かしか含まれていないものも存在します。無機成分自体は紫外線で破壊されませんが、それを繋ぎ止める樹脂が、紫外線で侵されてしまっては元も子もありません。訪問販売の業者で「無機塗料をこの価格で!」と言って勧めてくる方がいたら、名ばかりの無機塗料だと疑った方が良いでしょう。
その他、水性/溶剤、1液/2液といった仕様により、同じ素材でも耐久性に違いが生じます(水性よりも密着性や防水性に優れる溶剤タイプの方が、また乾燥で硬化する1液タイプよりも、硬化剤で反応効果させる2液タイプの方が、耐久性に優れる傾向にあります)。
4.実績のあるお勧めの塗料
私共でもこれまで様々な塗料を使用してきましたが、自信をもってお勧めできる塗料をいくつか紹介致します。
①AGCコーテックの「ボンフロン」シリーズ
「素材の会社」として知名度のある、AGCが世界で初めて開発した、現場施工のできるフッ素樹脂「ルミフロン」を用いて、系列メーカーが作った塗料です。ご年配の方には「AGC」ではなく、旧社名の「旭硝子」の方が馴染み深いかもしれません。
この会社の優れている点は、フッ素樹脂を自社グループ内で製造していることです。国内で常温で施工可能な塗料用フッ素樹脂を製造しているメーカーは、主にAGCと他社1社しかありません。
そして素材メーカーだけあって、フッ素樹脂の性能が違います。
AGCの塗料用フッ素樹脂、3F系FEVE「ルミフロン」は、フッ素モノマーと塗料化に必要なビニールエーテルとが規則的に交互配列を作る樹脂です。
交互配列のためフッ素モノマーがビニールエーテルを守る構造で非常に高い耐候性を有しています。
(これに対し、他のメーカーの多くが住宅向けのフッ素塗料に使用している4Fフッ素(4F系FEVEs)は、フッ素モノマーとビニールエステルの配合になりますが、交互配列がルミフロンより低く、結合力の弱いビニールエステル同士の結合部が紫外線により破壊されてしまうのです。)
何より特筆すべきは、この「ボンフロン」の技術が、既に35年以上の長い歴史を持っていること。大阪城天守閣や、沖縄の美ら海水族館など、一度塗装してしまうと再塗装が難しい、名立たる建築物に数多く採用されており、今なお良好な状態を保っています。
デメリットとしては、塗料の価格が高いことでしょうか。通常の販売ルートでは、一般的なフッ素塗料の倍近い価格です。しかしながら、私共が所属する「日本塗装名人社」では、独自の塗料販売の商流を持っており、通常のフッ素塗料と変わらない価格で、「ボンフロン」での塗装をご提案できます。更に私共は、メーカーの認定施工店である「メイクUPショップ」にも登録をしており、同一塗料ながらメーカーの保証が付帯する「ルミステージ」での塗装をご提案することもできます。
②KFケミカルの「無機UVコート」
私共の所属する「日本塗装名人社」が、高機能塗料メーカーの雄・KFケミカルとタッグを組んで生まれました。一般的な無機塗料の無機成分含有率が数%程度であるのに対し、この塗料の無機成分含有率は30%を超えます。ベースとなる樹脂もフッ素から成っており、キセノンランプの照射による促進対候性試験では、「対候形1種」となれる基準の4倍の10,000時間を超えてもなお、80%以上の光沢を保っているというデータもあります。私共の沖縄県宮古島での暴露試験においても、取り立てて優秀な成績を収めており、その塗膜の強靭さは私共でも証明済みです。
さらに、従来の無機塗料で課題であった柔軟性もクリアしており、塗膜片を曲げてもひび割れしにくい塗料になっています。
難点は、この塗料もやはり高価なことです。一般住宅の塗装に際しては「オーバークオリティ」と評されることもある無機塗料ですが、次なる塗り替えのタイミングを相当先延ばしできることから、結果的に住宅改修に係る費用は抑えられると考えることもできるでしょう(頻繁に塗り替えをすると、その分足場費用や塗装の人件費がかかりますので)。
5.おわりに―塗料は「半製品」です
ここまで塗料ごとに耐用年数が様々であるということを見てきましたが、塗装工事を行う上で、耐用年数を決定づける、もう一つ重要な要素をお伝えします。
それは、塗料は、塗装されて塗膜となって初めて完成する、いわば「半製品」である、ということです。
塗料自体の材質もさることながら、それを塗る職人の技量や、作業環境によっても、耐久性は左右されます。
どんなに良い塗料を使っても、塗り回数や希釈率、乾燥時間、天候などが適切でなければ、本来の耐久性能を発揮できません。
業者がメーカーの施工要領を把握しているか、また現場の職人がそれを順守して塗装しているか、業者選定の際には、塗料だけではなく「塗り手」のことも考慮に入れた方が良いでしょう(私共では、使用する塗料・塗り回数・希釈率を、塗装時のお約束事として、お見積書に明示しています)。他社様のお見積りであっても、ご不明点等がございましたら、遠慮なく私共にお尋ねください。
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