外壁の劣化と塗装のタイミング―改修の目安とは?2021/10/29
1.はじめに
「塗り替えのタイミングっていつ…?」というご質問は、多くの方からいただきます。
勿論早めに行うに越したことはありませんが、塗装工事など住宅の改修は、決して安いお買い物ではありません。できることなら、少しでも今の状態を長持ちさせて、改修のタイミングを見極め、かかる費用を抑えたいものですよね。
当ページでは、外壁塗装の目安となる、外壁の劣化の各症状をご紹介します。改修をご検討中の皆様に、少しでもお役に立てれば幸いです。
2.外壁塗装の目安を知る―築10年での塗り替えはまだ早い!?
新築で戸建住宅を購入された場合、築10年程度になると、ハウスメーカー様から定期点検のご案内が入ることが多いようです。「外壁塗装・防水・防蟻をセットで行うと、お家の保証を延長します」などと言って、改修を推奨します。
しかしながら、外壁材をはじめ、建築材料の品質改良が進んだ昨今においては、築10年程度では「まだまだ綺麗」と言えるお家がほとんどです。保証期間を延長するにしても、築10年の段階で、構造上の問題や雨漏りなどが発生していないのであれば、よほど長期間ほったらかしにして劣化が進行しない限り、今後も不具合は起こらないと思います。
それに加えて、ハウスメーカー様で施工をすると、工事代金が高くついてしまいます。ハウスメーカー様は施工職人を持たず、私共のような専門業者に下請けに出すため、私共の施工価格に、彼らの利益が上乗せされます(多くの場合30%程度と言われていますが、それ以上に上乗せされている事例も見受けられます)。改修の計画を前々から立てており、予め資金も十分に準備されている方なら良いでしょうが、そのような方は決して多くはないでしょう。
コストパフォーマンスの観点からも、お家の状態をご自身で把握しておき、早すぎず、遅すぎず、適切なタイミングで改修を行っていただくのがベストだと考えます。
では、どのような状況になったら、外壁塗装を行う「適切なタイミング」と言えるのでしょうか。以下では様々な外壁の劣化の症状をご紹介して、そのタイミングをご説明致します。
3.外壁の劣化の症状
一言で「外壁の劣化」と言っても、様々な症状があります。代表的なものをご紹介します。
これらの各症状の発生は、築年数も勿論ですが、立地条件によるものも大きいです。
①ひび割れ(クラック)
寒暖差による外壁材の膨張・収縮や、主に地震や地盤沈下などの建物の動きによって発生します。我々の業界では「クラック」と呼ぶこともあります。特に日当たりの良い面や、幹線道路や線路沿いなどの揺れが激しい場所においては、顕著に発生が見られます。
木造の戸建住宅の場合、窓廻りや、外壁材を留める釘廻りといった、負荷がかかる場所に起こりやすいです。また経年で外壁材の表面が水分を吸収するようになると、外壁材の膨張・収縮が一層起こりやすくなり、劣化スピードが速まります。
モルタルで仕上がっている外壁の場合は、施工後の乾燥によってモルタルが収縮し、築数年程度でもひび割れが発生することがあります。
ひび割れは、どのような建物でも、多かれ少なかれ発生するものです。
ひび割れが発生したら、すぐにでも塗装・改修をしなければならないかというと、一概にそうとは言えません。その緊急性は、ひび割れの幅や箇所によって異なります。
幅が0.3mm以下、深さ4mm以下の微細なひび割れは、その幅が髪の毛のような細さであることから「ヘアークラック」と呼ばれます。隙間が小さいため、ここから内部に水が入ることは稀です(軒がある建物の場合は、強風を伴う大雨でもない限りは水がかからないと思います)。木造住宅であれば、万一水が入ったとしても、外壁材の内部に防水シートが入っていますので、直下に窓などの防水シートの切れ目がない限りは、室内に漏れ出すことはありません。
ひび割れから水が浸透すると、上述のように、外壁材の膨張・収縮が起こりやすくなるので、ひび割れが大きくなる可能性がありますが、そこまで水は入らないでしょうから、しばらく経過観察を続けていただいても宜しいのではないかと考えます。
一方で、「ヘアークラック」を超える大きさの、大きなひび割れに関しては、注意が必要です。隙間が大きいために水分が入りやすく、外壁材が傷みやすい状態になっています。特にひび割れが地面と平行に走っていると、外壁に垂れた雨水は、容易にひび割れの内部へつたわります。
中でも鉄骨造や鉄筋造の建物においては、木造とは異なり、内部に防水シートが入っていないため、室内への雨漏りのリスクもあります。ひび割れが外壁材を貫く「貫通クラック」という状態になると、台風の際に室内に雨漏りすることにもなります。さらに、ひび割れから内部の鉄筋に水分がつたわると、鉄が錆びることで体積が増し、外壁材に負荷がかかり、内部で破裂する「爆裂」という現象も発生します。
気になるほどの大きさのひび割れが発生したら、外壁塗装を含めた改修をお考えいただくタイミングと言っても宜しいかと思います。
②色あせ(チョーキング・白亜化)
外壁の色あせは、外壁表面が紫外線や風雨などに晒されることで、表層の樹脂が破壊され、顔料が抜け落ちたり、変化したりすることによって起こります。色あせした外壁を触ると、表面に残った白い顔料が手につくことがあります。この現象は「チョーキング」「白亜化」と呼ばれます。
チョーキングが進むと、外壁表面の防水性が低下し、外壁材が水分を吸って、劣化スピードが速くなったり、藻やカビが発生しやすくなったりします。直ちに塗装をしないとまずい、という状況ではありませんが、ここからの劣化スピードは速まりますので、そろそろ塗装を考え始めても宜しいのではないかと思います。
ただし、意匠性のあるサイディング外壁をクリヤー塗料で塗装したいとお考えの方は要注意です。クリヤー塗装をする場合、外壁の既存の色がそのまま残ることになりますので、色あせた外壁にクリヤー塗装を行うと、色あせが目立ったり、塗装面が白く濁ったりと、美観の面で優れません。クリヤー塗装をお考えの場合は、色あせが発生していないか、初期の段階で、塗装をする必要があります。
③シーリング材の硬化・剥離・破断・欠落
シーリング材の樹脂が、紫外線のエネルギーや、雨、温度変化などの外的要因により破壊され、弾力性を保つ添加物が分離することで、シーリング材の硬化が起こります。弾力性を失ったシーリング材は、建物の動きに追従できず、表面がひび割れたり、外壁から剥がれたりします。劣化が進行すると、シーリング材が破断・欠落して、空間が生じてしまうこともあります。隙間や空間が大きいと、そこから水が壁内に浸入し、外壁材を傷めたり、箇所によっては雨漏りを招いたりします。
成分の理由から、一般的にシーリング材の劣化は、外壁材の劣化より早期に生じます。
表面が硬化してひび割れている程度であれば、水が入らないので、今すぐ改修を行わなければならない緊急性はありません。しばらく経過観察を続けていただいても良いと思います。
一方でシーリング材が剥離・破断・欠落して、外壁材との間に隙間ができてしまっている場合は、外壁材へのダメージや雨漏りが心配ですので、早期の改修をご検討いただいた方が賢明です。
④塗膜の膨れ・剥がれ、外壁材の反り・欠損
上述の外壁材の傷みや、異物の接触などの要因で、塗装面の塗膜に膨れや剥がれが生じたり、あるいは外壁材が反ったり、欠損したりすることがあります。
築年数が浅い段階での軽微な破損であれば、そこまで神経質になる必要はないかと思われますが、多くの場合は、上記①~③のいずれかで、改修が必要な段階に入ってしまっていると思われます。
一度外壁塗装をしたにも関わらず、年数が経過してない状態で塗膜の膨れや剥がれが生じている場合は、施工不良か、もしくは雨水が内部へ浸入している可能性があります。
⑤雨筋汚れ
窓の下など、雨が集中して流れる箇所は、雨が汚れを運び、雨筋がついてしまいます。築年数とともに、汚れが目立ってくるお家が多いです。
躯体に影響を与えるものではなく、美観の問題でありますので、改修を焦る必要はありませんが、雨筋汚れが目立つということは、築年数もある程度経過していると思われ、おそらく他の劣化症状も表れているのではないかと考えます。外壁材がすでに水分を含みやすい状態にあると、水がよく通る雨筋汚れの部分からも、外壁材の傷みが進行します。
⑥錆・錆汁汚れ
鉄部に錆が発生すると、素地の腐食が進行します。腐食状況によっては、塗装での対処が難しくなることがあります。また雨で錆汁が流れると、周囲を茶色く変色させ、汚れの除去が困難になります。
戸建住宅に使用される鉄部の多く(雨戸・シャッターボックス・庇・水切りなど)は、焼付塗装で保護されており、築10年前後で錆が発生することは稀ですが、配管の留め具やビスに使用されている鉄部が錆びていることはよくあります。また施工状況によっては、錆びに強いと呼ばれる金属サイディングも、端部から錆が発生することがあります。
美観が気になるようであれば対処した方が良いですが、錆の程度が著しくなければ、それだけのために、わざわざ急いで全面改修をする必要はないと思います。
ただし、トタンの外壁や、(外壁ではありませんが)外部の鉄骨階段など、錆が進行しやすく、放置すると躯体に影響を及ぼす可能性のある箇所は、錆に気付いた段階で、お早目の改修をお勧め致します。
⑦藻・カビの発生
日当たりや風通しの悪い面は、経年により、藻やカビが発生しやすくなります。外壁の素材や立地にもよりますが、公園などの緑が近い箇所や、日の当たらない北面・ベランダ内部などは、我々の経験上、発生が目立つように思います。
これらの症状は、主に美観の問題です。気になるようでしたら、手が届く範囲であれば、ご自身で掃除をしていただくのが一番手っ取り早いと思います(柔らかいスポンジに中性洗剤をつけて、やさしく洗うのがコツです)。
直ちに躯体への影響はないとはいえ、この状況を放置するのは望ましくありません。藻や苔は水分を含みますので、水分の滞留が、外壁材の劣化を早めます。時間の経過により、上記の各症状に繋がる可能性が高いです。さらに時間が経つほど藻やカビの根が深くなり、完全除去が難しくなります(外壁塗装を行っても、再び繁殖することがあります)。
また雨漏りによって藻やカビが発生している場合や、発生したカビが室内へ及んでいる場合は、言うまでもなく、早期の対処が必要になります。特にカビは、お住まいの方の健康にも悪影響を及ぼします。
4.おわりに
皆様のお家に、これらの症状は見られますでしょうか。緊急性の高いもの、低いもの、様々あると思います。
ベストな塗り替えのタイミングを見極めるには、お家の状態を、定期的に観察されることが大事です。劣化が初期の段階で改修の検討を始めていただくと、比較的余裕を持って業者や改修方法を選択できると思います。
なかなかそこまでの余裕がない方は、築年数が同程度の近隣のお家が塗装を始めたり、訪問販売の業者が複数来るようになったりしたら、そろそろかな…と考えていただくのも宜しいのかなと考えます(訪問販売の業者は仕事の質が悪いことが多いので、即決をしないよう、十分注意してください)。
ただし、このような「待ち」の姿勢では、気が付いたら手遅れ…ということも往々にしてあり得ます。少しでも「大丈夫かな…」と不安に思ったら、お気軽に私共にお問い合わせください。無料で現場調査にお伺い致します。
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