外壁の「チョーキング」とは?どう塗装する?2022/02/28

1.はじめに―「チョーキング」とは?

「チョーキング」とは、塗装表面の樹脂が、紫外線等によって分解され、塗膜内の顔料が粉となって分離する現象を言います。「白亜化」「粉化」と呼ばれることもあります。
色あせてきた建物の外壁に触れると、まさにチョークのような、白や外壁色の粉が手につきます。これこそが「チョーキング」です。蓄積した汚れではなく、塗装表面の劣化が原因です。
チョーキングは、外壁だけでなく、雨樋や雨戸などの「付帯部」と呼ばれる箇所、そしてスレート屋根などでも起こります。建物以外であっても、塗装仕上げがされている全ての箇所で起こりうる現象です。ガードレール、公園の遊具、金網、立て看板など、街中でうっかり手を触れて、手が汚れてしまった経験がある方は多いのではないでしょうか。

2.チョーキングはなぜ起こるのか?

チョーキングの原因は、塗料に含まれる「酸化チタン」にあります。
この材料は白色顔料として使用されており、明るい色を出すために必要な材料です。インクや化粧品などにも使われている、我々の生活にも身近な素材です。
色を出すために重要な役割を果たしている酸化チタンですが、赤外線を浴びると、空気中の酸素や水と反応して、酸化チタンの周囲に、「ラジカル」と呼ばれる、樹脂を破壊する物質を発生させます。発生したラジカルは、酸化チタン周辺の樹脂を分解し、酸化チタンの顔料をむき出しにします。このむき出しになった顔料を触ると、手に白い粉がついてしまうというわけなのです。
酸化チタンは、一般的に白色に近いほど多く含まれます。白い塗料の方が色あせはしにくいため、経年による色の変化は少ないですが、チョーキングは白い塗料の方が目立つようになります。

3.チョーキングを放っておくとどうなる?

上述の通り、チョーキングは、塗膜の樹脂が分解されることで起こる現象です。すなわち、チョーキングが発生している状態は、塗装の樹脂が劣化しているということでもあります。
外壁などにチョーキングが発生していると、塗装本来の機能である、塗膜の防水性が低下します。防水性が低下して、外壁材が水を吸うようになると、外壁材にひび割れが生じたり、藻やカビが発生しやすくなったりします。また鉄部においては、錆の発生にもつながり、下地の腐食や錆汁汚れを招きます。
チョーキングは、南面や西面など、日当たりの良い部分を中心に、新築や前回の塗装から10年程度で発生することが多く、チョーキングの発生は「塗り替えを考えるサイン」とも言えるでしょう。
とはいえ、「今すぐ塗装をしないと、取り返しのつかないことになる…」というわけではありません。確かに早めに塗り替えを行った方が、外壁に与えるダメージは少なくて済みますが、直ちに雨漏りが発生したり、下地補修が高額になったり、塗装で対処できなくなったりするということはありません。他に対処が必要な箇所はあるか、どの業者にお願いするか、どのような塗料で塗るのが良いか、じっくり検討してからでも遅くないと思います。
私共の地元である板橋区・練馬区でも、「お宅の外壁、チョーキングしていますよ」「早急に塗装しないと大変なことになります」などと不安を煽り、塗装工事を迫る訪問販売の業者がいるようです。訪問販売の業者の見積りは費用が高額だったり、内容が不十分(塗装仕様や塗装範囲が明確でない等)だったりすることが多く、すぐに契約してしまうのは危険です。「○○日までに契約してくれたらお値引きします」等のうたい文句は、彼らの常套手段です。契約する前に情報収集をしましょう。


ただし、高意匠のサイディング外壁をクリヤー塗料で塗りたいとお考えの場合は、チョーキングが目立つ前の塗装が必要です。チョーキングが目立ってしまってからでは、その上からクリヤー塗装をしても、きれいな状態にはなりません(白くぼやけてしまいます)。

4.チョーキングをなるべく起こさない塗料は?

塗料を形成する有機樹脂は、年月とともに劣化が進んでいきますので、どのような塗料でも、光がさほど当たらない場所であっても、やがてはチョーキングを起こします。
そうであっても、数年でチョーキングを起こしてしまう塗料と、日が当たっても20年以上チョーキングしないような塗料とでは、次回の塗り替えを要する時期、ひいては塗装工事に係るコストに、格段の差が出ます。
長期にわたってチョーキングを防ぐためには、チョーキングが起こりにくい塗料を選ぶことが何より大事です。
では、チョーキングが起こりにくい塗料というのは、どんな塗料なのでしょうか。
いくつかの例を挙げて紹介致します。

①「ラジカル制御」の塗料

チョーキングの原因が、塗料に含まれる酸化チタンの周囲で発生する「ラジカル」にあるというのは、先程ご紹介した通りです。
技術が進み、その「ラジカル」の発生を抑制する「ラジカル制御」の塗料が登場し始めています。
「ラジカル制御」の塗料の中で、最もメジャーなものは、日本ペイントの「パーフェクトトップ」でしょう。酸化チタンを改良し、発生したラジカルを周囲のバリヤー内に封じ込める「高耐候酸化チタン」を開発するとともに、それでも発生してしまうラジカルを捕まえる「光安定剤」を用いることで、従来の外壁塗装のスタンダードであったシリコン塗料を超える耐久性を実現しました。同様の塗料は他社でも開発されており、関西ペイントの「ダイナミックTOP」や、エスケー化研の「プレミアムシリコン」なども、似たような仕様になっています。
ただ樹脂自体は、アクリルやシリコンであるため、後述するフッ素塗料と比較すると、どうしても耐久性に劣ります。その分フッ素塗料よりも価格が安い塗料が多く、耐久性も価格も、シリコン塗料とフッ素塗料との中間といった形になります。

②フッ素塗料

樹脂を破壊する原因を抑える「ラジカル制御」塗料に対し、そもそも樹脂を紫外線で破壊されにくくしているのが、フッ素塗料です。
フッ素樹脂の結合(C-F結合)は、紫外線による分解エネルギーよりも強く、これを塗料の樹脂に使用することで、長期にわたって高い対候性を保持します。塗料の価格はシリコン塗料よりも高いですが、多くの塗料が15年以上の耐久性を誇り、次回の塗装に必要な期間を延ばせるので、長い目で見ると、塗り替えに係るコストを抑えることができます。
フッ素塗料の中で、私共が自信をもってお勧めするのが、AGCコーテックの「ボンフロン」です。ほとんどの塗料メーカーは、フッ素樹脂を国内他社から購入するか、または輸入に頼っていますが、「素材の会社」を自称するAGCグループでは、フッ素樹脂を自社で開発しており、フッ素塗料の主流である「4Fフッ素」よりも強固な結合の「特殊な3Fフッ素」を塗料に使用しています。
実績も多く、沖縄の美ら海水族館、大阪城天守閣など、著名な建築物の塗装にも採用されています。特に美ら海水族館においては、日差しが強い沖縄で、かつ潮風が吹く厳しい環境でありながら、20年以上塗装せずとも、きれいな外観を保っています。一般住宅用の塗料においても、まったく同じ素材が使用されています。

塗装の際にこれらの塗料を選択いただくことで、チョーキングの心配はしばらく防げるものと思います。

5.おわりに―良い塗料は良い職人が塗ってこそ

チョーキングが発生しない塗料で塗装してもなお、チョーキングが発生するケースがあります。それは、施工不良によるものです。
塗装前の洗浄の不足、塗料の撹拌不足、塗装後の乾燥不足など、施工が悪いと、塗料は期待される耐用年数を満たしません。せっかく良い塗料を塗っても、塗装する職人の腕が悪くては、かけた費用が無駄になってしまいます。
塗料は「半製品」。良い塗料を、良い職人が塗って、初めてその性能が活かされます。良い業者・職人を見つけるにあたって、近隣の施工実績があるかどうか、あれば現場の仕上がりはどうか、参考にしていただくのも良い方法だと思います。

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